RESEARCH

超低損失ワイドギャップ半導体パワーデバイスの絶縁膜技術開発

電力問題は今世紀の最重要課題であり、その解決のためには、電力の輸送・変換を司るパワーデバイスの高性能化が不可欠です。炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)等のワイドギャップ半導体は、現状主流のシリコンパワーデバイスの理論限界を打破できる新材料として注目を集めています。これらのワイドギャップ半導体を用いれば、パワーデバイスの小型化や省エネ化が期待できます。私たちは特に、スイッチング素子の本命であるMOS(金属-酸化膜-半導体)型パワーデバイスの研究開発に取り組んでいます。具体的には高性能・高信頼性MOSデバイスの実現を目指し、表面界面反応を原子レベルで制御することで、理想的な絶縁膜形成プロセスを探究しています。

半導体の単一光子源・スピン光源を活用した量子テクノロジー

完全秘匿の量子暗号通信や、超高速演算を実現する量子コンピューティングは未来社会を形作るキーテクノロジーとして期待を集めています。そして、これらの技術の鍵を握るのがワイドギャップ半導体の欠陥に由来する単一光子源やスピン量子光源です。その代表例はダイヤモンド中の窒素-空孔中心(NV中心)であり、室温でも量子状態を保つ系として注目されています。私たちは将来的な量子デバイスの実装・集積化を見据え、結晶成長や加工、そしてデバイス技術の確立したSiCにおいて有望な欠陥の開拓に取り組んでいます。具体的には欠陥の形成手法を確立し、その発光・スピン特性の自在制御を実現することで、量子力学の基本原理に立脚した非従来型デバイスの創出に挑んでいます。

IV族混晶半導体を利用した低消費電力光電子融合デバイス

社会のデジタル化・IOT化は加速の一途を辿っており、既存の情報通信システムでは、伝送能力と処理能力の双方の観点で限界が訪れています。エレクトロニクスとフォトニクスの融合は、この限界を克服する技術革新として期待されています。光デバイスを電子デバイスとともに集積化することで、情報通信の高速化や超低消費電力化が可能です。さらに、量子情報技術、生体センシング、超高速イメージセンサなどへの応用展開も期待できます。私たちはエレクトロニクスとフォトニクスの真の融合を目指し、シリコンと同じⅣ族材料であるゲルマニウム(Ge)やゲルマニウムスズ(GeSn)を用いた光電子融合デバイスの研究開発を進めています。

スーパーコンピュータを活用した半導体欠陥のスピン・光物性の解明

半導体材料における欠陥(置換型元素や原子空孔等)は、ドーパントやキャリアトラップ、再結合中心として振る舞い、電子・光デバイスの性能を決定付けます。また、欠陥は単一光子源やスピン量子光源として機能し、量子コンピューティング等への応用でも注目を集めています。欠陥の自在な形成・制御・操作に向け、その微視的構造やスピン・光物性の詳細な理解が不可欠です。私たちはスーパーコンピュータを活用した高精度第一原理計算により、物質中における原子核と電子の相互作用を取り扱うことで、欠陥の物性解明に取り組んでいます。特にワイドギャップ半導体中や絶縁膜界面の欠陥の理論解明に取り組み、物質・デバイス設計に直結する知見を得ることを心掛けています。

WATANABE LABORATORY

Department of Precision Engineering
Graduate School of Engineering
Osaka University